ここまで本記事を読んでいただいた読者の中には、「3Dスキャナを使えば簡単に3Dデータを作成できるんじゃないの?」という疑問を持った方もいるだろう。結論から言うと、3Dスキャナを使っても、3Dプリンタでの造形に利用できる3Dデータを得ることはそう簡単ではない。

UNIscan

 

3Dスキャナにもいろいろなタイプがあるが、一般のユーザーが気軽に使えるクラスの3Dスキャナは、精度も低く、スキャン時に余計なゴミが入ったり、ポリゴンが欠けてしまったり、ディテールが潰れてしまったりしがちだ。単にPCの画面上で3Dモデルを閲覧するだけなら、多少ポリゴンが欠けていても問題にはならないが、3Dプリンタで造形するには、立体のオブジェクトとして破綻のない3Dデータでなければならない。そのため、3Dスキャナでスキャンした3Dデータをそのまま使うことはできず、手作業での修正が必要になってしまうのだ。3Dデータの修正はかなりのスキルと手間が必要であり、一からモデリングした方がかえって楽な場合も多い。

また、3Dスキャナは、あくまですでに存在する物体を3Dデータ化するための機器なので、目の前にある物体の複製には使えるが、ユーザーの頭の中だけに存在する物体や、今目の前にない物体、小さすぎる物体や大きすぎる物体などは、3Dデータ化できない。3Dスキャナは、物体の3Dデータ化を行なってくれる機器ではあるが、決して3Dモデリングが不要になるわけではないのだ。