サポートとは、3Dプリンタのように断面形状を積み重ねていくことで立体モデルを造形する手法(積層造形)において、立体モデル以外に造形した仮の部分のことを指す。サポートは元の3Dデータにない形状で、これをわざわざ造形し、造形完了後に除去する必要がある。

サポートが必要となる理由は、造形中の材料が重力によって落ちないようにするためだ。基本的に、上に向かってせり出していくようなオーバーハング部や、ある高さから突然現れる形状では、仮の土台としてサポートが必要となる。

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3Dプリンタを活用する上では、このサポートの特性を把握しておくことが不可欠だ。どのような形状をどのような条件で造形する場合にどのようなサポートが必要となるのかは、3Dプリンタが採用する造形方法によって異なってくる。サポートの存在は、造形時間や使用する材料の量、ひいてはコストにも影響する。サポートの特性を正しく認識することは、3Dプリンタを導入する際の判断材料にもなるし、3Dプリンタの導入効果を高めることにもつながる。

基本的にオーバーハング部などでサポートが必要となるが、ある程度の角度のせり出しはサポートなしで造形できる場合もある。例えば、樹脂溶融型の3Dプリンタでは垂線(積層方向)から30 °くらいまでのせり出しはサポートなしで造形できる場合が多い。

どの部分にサポートが必要になるのかは、3Dプリンタの付属ソフトなどが自動的に判断し、追加する機能を持つようになってきた。この場合、ユーザーは造形エリアへの配置(積層方向に対する角度)だけを考えればよいのだが、自動作成されたサポートの位置や形状が必要十分なものかどうかの判断は必要だ。

例えば、重力にさからうだけではなく、材料の収縮などによって反りなどの変形が発生するのを抑えるためにサポートを付加する場合もある。詳しくは後述するが、サポートを切断して取り除く場合にはその作業をしやすいか、切断の跡が外観品質などに悪影響を与えないかといったことにも配慮することが必要だ。

サポートの材料は、立体モデルの造形材料と同じ場合と、別の材料を使う場合がある。液体の光硬化性樹脂の液面に対して、断面形状の部分にレーザなどを照射して硬化させていく方法(光造形法)では造形材料とサポート材料は同じになる。この場合、基本的に手作業でサポートを取り除く。立体モデルとサポートの接続部を細くするなどして切り離しやすくするといった工夫が採られる。

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熱硬化性樹脂を可動ヘッドから吐出する熱溶解積層法では、1種類の材料しか使えない場合には必然的に造形材料とサポート材料は同じになり、光造形法と同じく手作業による除去が必要になる。同方法の低価格3Dプリンタでは多くの機種で、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂を使う。さまざまな色のABS樹脂を用意している3Dプリンタもあるが、たとえ異なる色であっても同じABS樹脂を使う限り、サポートの除去は手作業になる。

ただし、ABS樹脂とPLA(ポリ乳酸)樹脂の2種類を使える機種では、造形材料としてABS樹脂を、サポート材料としてPLA樹脂を使えば、造形後に水酸化ナトリウム水溶液に浸すことでサポート部だけを除去できる。Stratasys社の「Dimension」シリーズや「Fortus」シリーズのように、アルカリ水溶液で溶ける材料をサポート専用の材料として提供する熱溶解積層法の3Dプリンタもある。このように、熱溶解積層法を採用する3Dプリンタでは造形材料とサポート材料を異なる物性とすることで、サポートを除去しやすくすることが可能だ。

インクジェット・ノズルから材料を吐出する方法の3Dプリンタでも同様に、造形材料とサポート材料を異なる物性としている。サポート材料として提供する材料にはさまざまな特徴があり、具体的には、[1 ]水で溶かせる材料、[2 ]加熱して溶かせる材料[3]ウオータージェットで吹き飛ばせるゲル状の材料、などがある。

粉末材料を1層ずつ硬化させていく方法では、未硬化の粉末が造形エリアを埋め尽くすため、それがサポートの役割を果たす。特にサポート形状のデータを用意する必要はない。造形完了後に立体モデルを取り出すと、周囲にある粉末の多くは脱落する。しかし、入り組んだ内部に残った粉末や表面に付着した粉末を取り除く作業は必要となる。基本的に、空気を吹き付けて除去し、細かな部分はブラシなどを使って手作業で取り除くことになる。

シート状の材料で断面形状の輪郭線を切断して積層していく方式も、立体モデル以外の部分がサポートの役目を果たす。粉末積層型と違って、サポート部を気体や液体で吹き飛ばすことはできないので、手作業でのサポート除去となる。除去しやすいようにサポート部分にも切り込みを入れたり、まとまって除去できるようにあえてサポート部の層間も接着したりといった工夫をしている。

このようにサポートの除去方法はさまざまだ。サポートを手作業で取り除く場合には、サポートの切り離し部に対して工具などが届くようにする必要がある。逆に言えば、入り組んだ内部などがある形状の造形は難しいということになる。また、切断部が外観品質に影響するようなときには、磨きなどの仕上げ処理が必要だ。射出成形においてパーティングラインやランナの位置を気にするように、3Dプリンタでもサポートの位置が適切になるよう、積層方向などを調整する必要がある。

この点で、サポートを溶かしたり、吹き飛ばしたりして除去するタイプでは形状の自由度が高まる。例えば、軸受の内輪と外輪、転動体を同時に造形したり、球体の中に球体が入れ子状に入った形状などを造形したりできる。ただし、サポート材料を排出するための隙間は不可欠だ。砂型鋳造において、鋳造後に砂を取り除くことが必要なことを考えればイメージしやすいかもしれない。吹き付ける強さによっては、樹脂製の立体モデルの場合は微細部が壊れることもあるので注意が必要である。

特徴的な形状の造形が可能なのが、熱溶解積層法の3Dプリンタである。前述のようにある程度の角度まではサポートなしにせり出していけるので、内部が空洞になっており、それを覆う壁に隙間が全くないような形状でも造形できる。